■「平均賃金」と「個別賃金」の違い

平均賃金とは、一人ひとりの賃金の合計額を総人数で除したものをいいます。個別賃金とは、高卒35歳勤続17年生産職というように、労働力の銘柄を特定したときの賃金をいいます。平均賃金が、賃金の労務コストの側面を色濃く反映する指標であるのに対し、個別賃金は、労働力の質を考慮して賃金比較をする際に有効な指標です。平均賃金による比較では、仮にすべての個別賃金あ同一であっても在籍者の分布により差が出ます。一人ひとりの賃金水準の社会的な位置づけを確認するためには個別賃金による比較が欠かせません。

■平均賃上げ方式とは?

働く人の平均賃金をいくら引き上げるか、つまり一人平均の労務コストをもとに交渉する要求方式です。一人ひとりの新賃金は、賃上げ妥結後に行われる賃上げ配分によって決まります。

平均賃上げ要求の多くが、定昇込みで行われています。定昇制度がない場合でも、要求をつくりやすい反面、従業員の賃金実態をしっかり把握・分析したうえで交渉しないと、どんぶり勘定的になるという欠点が合います。

好景気や物価が上昇している局面などにおいては、着実な定昇分の確保に加えて賃上げ分(ベースアップ)の獲得が求められます。

■個別賃金方式とは?

銘柄を特定した個別賃金水準の改定について交渉する要求方式です。

産業別・職種別労働組合からなる欧米では、この方式によって賃金交渉が行われています。この方式では、個別賃金をまず決定し、その結果として平均賃金が算出されるという関係になります。新卒直入社者の標準を要求する標準労働者方式、職種とその熟練を基準に、あるいは特定の資格を基準に要求をする職種別一人前方式などがあります。連合では、同一年齢ポイントのベアを要求する「A方式」と1歳前からの定昇込みで要求する「B方式」があります。

■「加重平均」と「単純平均」の違い

「単純平均」は、各組合(企業)の賃上げ額を単純に足して平均賃を集計する方法であり、「一組合あたりの」賃上げ額の平均が分かります。一方「加重平均」とは、賃上げの影響を受ける組合員の数を計算に反映させ、「組合員一人あたりの」賃上げ額を算出する方法です。金額ごとに人数をかけることを統計学で加重(ウエイト)というため、このような呼び方をします。

れんとち工業労働組合 トチレン製作所労働組合
賃上げ額 20,000円 賃上げ額 10,000円
組合員 70人 組合員 30人

上表の例の場合、

単純平均=(20,000円+10,000円)÷2組合=15,000円

加重平均=(20,000円×70人+10,000円×30人)÷(70人+30人)=17,000円

このように手法によって値に違いが生じます。